ブドウ農家が挑んだ廃棄果物の再利用|乾燥による活用のかたち
- お役立ちコラム
- 2026.01.19
こんにちは。
岡山県で食品乾燥機を製造・販売している、大紀産業株式会社の広報です。
今回は、当社の食品乾燥機をご導入いただいている「ARATO535様」にインタビューを行いました。

ARATO535様は、日々の仕事の中で食品乾燥機を使用されており、シャインマスカットやピオーネを乾燥させる工程で活用されています。
乾燥した果物は、無添加のドライフルーツとして販売されています。現在は「食べチョク」などで販売されており、今後、無印良品での発売も予定されています。

今回は、食品乾燥機を導入された背景をはじめ、シャインマスカットやピオーネの乾燥における具体的な使い方、ドライフルーツの商品化や販売の取り組みについて、詳しくお話を伺いました。
食品乾燥機の購入を検討されている方や、果物の加工・ドライフルーツ製造への活用を検討されている方にとって、実際の使用事例として参考にしていただければ幸いです。
目次
第2章|畑の現場から見える、ARATO535様の仕事のリアル
第1章|ブドウだけでは続かない。加工を考え始めた理由
大紀産業(以下、大):まず、現在取り組まれている事業について伺いたいのですが、そもそもこの事業を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
ARATO535株式会社 高橋社長(以下、高):父親が亡くなって、この畑をたたむという話が出たんです。でも、それではもったいないなと思って。ちょうど子どもが手を離れたタイミングだったので、「じゃあブドウをやってみようかな」と思いました。
大:お父さまの代では、ブドウはどのように出荷されていたんですか?
高:JA(農業協同組合)一本です。あとは捨てるばっかりでした。
大:捨てる、というのは規格外になったもの、ということですか?
高:そうです。JAの規格に合わなかったものは、ジャムに回すこともありましたけど、ジャムも作りきれなくて。結局、それも含めて全部捨てていたんですよ。
大:かなりの量の廃棄果物が出ていたんですね。
高:もったいないですよね。だから、そういうものを救済できないかと思って、加工品にしようと考えました。どれくらい売れるかは分からなかったですけど、とりあえずやってみよう、と。
大:加工品をやろうと考えた背景には、ブドウの栽培だけでは続けにくいという判断もあったのでしょうか。
高:毎年ずっと手伝ってきた中で、ブドウ栽培だけでは将来的に成り立たないと感じていました。 父はJFEに勤務していたため十分な年金がありましたが、私はまだ年齢的に年金を受給できないので農業のみでやっています。 その状況では、ブドウ栽培だけで生活していくのは難しい。 そこで、「加工品にも取り組もう」という判断に至りました。
大:お父さまの時代には、加工品を作るという考えはなかったんですね。
高:全然なかったですね。JAに出して、あとは捨てるだけでした。
大:とはいえ、高橋さんも畑仕事や栽培自体は、以前から関わってこられたんですよね。
高:はい。手伝いは、かなり来ていました。ゼロからではないですね。防除もずっと僕がやっていました。
大:防除まで担当されていたとは。
高:年を取ると、圧力のかかったホースを持って薬をまくのがつらくなるんです。それで、そういう作業のときはいつも呼ばれていました。ブドウの季節は、ほぼ毎週来ていましたね。

大:加工品の中でも、最初に考えたのがドライフルーツだった、と。
高:そうです。僕がドライフルーツが食べたかったんです(笑)で、最初に家庭用の五段の小さい食品乾燥機を買いました。それで試してみたら、評判がすごく良かったんですよ。「おいしい」と。
大:その時点では、販売はされていなかったんですよね。
高:してないです。何の許可も取ってないので。身内に配っていただけです。
大:その段階で、乾燥の条件出しも進められたんですか?
高:そうですね。家庭用の乾燥機で、温度や時間をいろいろ試しました。条件は3〜4パターンくらいです。早く処理したかったので、温度は少し高めに設定していました。
大:高めの温度でも、食感は問題なかったんでしょうか。
高:パサパサにはならなかったですね。ブドウは糖度が高いので。
大:家庭用で試してから、業務用の乾燥機導入を検討されたわけですが、大紀産業の乾燥機を知ったきっかけは何だったのでしょうか。
高:岡山大学のある先生の紹介です。「ドライフルーツやるなら大紀産業さん紹介するよ」と言われて。もともと岡山県で輸出プロジェクトの話があって、その中で知り合いました。
大:紹介を受けて、まずは1台導入されたと。
高:はい。まず1台、入れてみようと思って導入しました。

大:導入時、設備面での制約はありましたか?
高:はい。作業場に200V(動力電源)が来ていなかったので、2台目は100Vで使える中で一番大きいタイプの乾燥機を追加しました。もし最初から200Vが来ていれば、もっと大型の乾燥機を使えたと思います。

大:100Vだと、どうしても機種が限られますよね。
高:そうですね。三相200Vになると動力電源になりますから。
大:その動力電源も、現在は引き込みが進んでいると伺いました。
高:中国電力さんが電柱を立ててくれて、200Vを引く工事をしました。たまたま動力線工事の案内が来ていて、「そこまで来てるなら引けるな」と思ってお願いしました。
大:今後、加工の量を増やしていくための準備でもあるわけですね。
高:そうですね。来期は、さらにもう一回り大きい食品乾燥機が欲しいですね。
第2章|畑の現場から見える、ARATO535様の仕事のリアル
インタビュー当日、ARATO535様は、シャインマスカットやピオーネを育てている畑を案内してくださいました。畑を見ながら、栽培環境や日々の手入れについて話を伺いました。
高:こっちがピオーネで、こっちがシャインマスカットです。
大:全部、袋をかけているんですね。

高:袋をかけていないと、蜂が来ますからね。
大:熊とかイノシシとかも来るんですか。
高:熊は出ないですが、ハクビシンやイノシシはいます。鹿とか。
大:かなり多くの害獣が出るんですね。
高:いますよ。ここはイノシシが入ろうとした跡ですね。ほら、砂が付いているでしょう。イノシシだらけです。
大:ハクビシン対策も、いろいろ試されていると伺いました。

高:まず厄介なのがツルなんです。こうやって巻くじゃないですか。これを足がかりにして、上がってくるんですよ。
大:確かに、登れそうですね。
高:最初はそこで対策して、次はどこから上がるんかなと思って見ていたら、横に張っていた防風ネットから入ってきました。
大:爪を引っ掛けながら?
高:そうです。防風ネットがダメになると、今度はここにあった算木を足がかりにして上がり始めて。
大:ついているものを、全部使う感じですね。
高:最後は防鳥ネットです。鳥除けのネットの上を伝って上がってきました。
大:鳥はそれで避けられても、ハクビシンは難しいんですね。
高:そうですね。ハクビシンは上からブドウの実を食べるので、白い布を上にかけたこともあります。滑るように、タイベックス(デュポン製)を使いました。
大:それなら、登れなさそうですね。
高:破れないので、滑って食べられないだろうと思ったんですけど、今度は枝ごと折るようになりました。
大:頭がいいんですね。
高:そうですね。ハクビシンが入り始めてからで、もう遅かったんですけど、チクチクベルトも付けました。だいぶ上がらなくなったんですが、今年はそれでもやられました。
大:大変ですね…。そうした対策をしながら、一方で新しい品種にも挑戦されているんですよね。
高:そうですね。「マドンナの宝石」と「富士の輝き」を育てています。

大:その「マドンナの宝石」という品種は、どんなブドウなんですか?
高:赤系ですね。レッドシャインマスカットです。最近の新しい品種は、基本的に種なしで、皮ごと食べられるものが多いですね。
大:育てるのは難しくないんですか。
高:実は最初、育成をちょっと失敗してしまって。焦って早めに化成肥料をやったら、枯れそうになったんですよ。
大:それは大変ですね……。復活は?
高:復活しました。やっぱり若木のときは、やりすぎはダメですね。
大:こちらがマドンナの宝石で、向こうが?
高:向こうが「富士の輝き」です。
大:富士の輝き、初めて見ました。

高:まだ市場に出始めたばかりですね。シャインマスカット系で、いわゆるブラックシャインマスカットです。
大:苗はどこから?
高:志村葡萄研究所さんです。ホームページを見て、直接連絡しました。
大:この棚も、手作りなんですか?
高:そうです。単管パイプを自分で打ち込みました。基本は人力です。たまにユンボは使いますけど。
大:ブドウの木って、寿命はどれくらいなんですか?
高:持たせようと思えば20年以上いきます。15年くらい経ったら、木の間に新しい苗を植えていって、20年くらいで入れ替えるのが理想ですね。
大:ぶどうの管理自体も、かなり手がかかりますよね。
高:防除は全部で9回やります。虫に食べられると枯れるので、中をほじってスプレーを入れることもあります。最後は酵素を使っているので、防除をとばすこともあります。この酵素が甘さのポイントで、葉面散布で全体にかけています。
大:こうした作業を続ける中で、ぶどうがすべて生食として出荷できるわけではない、という状況もありますか。
高:ありますよ。花の時期にうまく実がつかなくて、房としては実が少なくなってしまうものも出てきます。
そういうものは生食では出しづらいので、全部ドライフルーツに回しています。
廃棄せずに、きちんと価値として活かせるんです。
大:作って終わりではなく、加工まで含めて考えていらっしゃるんですね。
高:農家は、作っているだけじゃお金にならないですから。ラインナップを持っていないといけない。だから冷凍もやっていますし、加工もしています。

第3章|実際に使って分かった、乾燥機の使い方と工夫
加工品としてドライフルーツに取り組む中で、ARATO535様は現在、シャインマスカットやピオーネの乾燥に食品乾燥機を使用されています。作業場では、実際に稼働している乾燥機や乾燥途中のぶどうを見ながら、具体的な使い方について話を伺いました。
大:この乾燥したシャインマスカット、色がすごくきれいに残っていますね。

高:ちゃんと色が残るんですよ。酸味も残る。これは生のまま乾かしています。何もしてないです。
大:冷凍してからではなく、生のままで?
高:はい。
大:通常はもう少し黒っぽくなります。ボイルなどの処理をして、ようやくこの程度まで色が残る感じです。
高:条件出しですね。温度の条件出し。短時間で乾かすようにしています。
70度で20時間です。
大:20時間でここまで仕上がるのは、すごいですね。水分値とかどんな感じですか。
高:水分値を機器で測定しているわけではありませんが、仕上がりの重量は、元の重量の4分の1以下だと思います。
大:ピオーネは、どれくらい乾燥に時間がかかるんですか?

高:ピオーネは50時間くらいかけます。粒が大きいと、どうしても時間がかかりますね。
大:へたを付けたまま乾燥すると、すごく時間がかかるんですが、ヘタは取っていますか。
高:はい、とっています。

高:あと、品種によって、乾燥前の処理も変えていますね。ピオーネは皮感が強いんで、全粒のまま乾かした方がいい。シャインマスカットは、全粒だと皮が残りやすいので、半分に割った方がいいですね。
大:食品乾燥機の操作自体は、難しくなかったですか?
高:誰でもできますよ。温度を70℃にして、時間を設定して3秒長押し。温度と時間しかないですから。

大:確かに、操作項目はかなりシンプルですね。
高:計器の数が少ないから、操作しやすいんですよ。
一方で、使ってみて分かった点もあります。果汁が多いので、掃除は大変ですね。全粒でやると、果汁がピュッと出るんですよ。
大:半分にすると、果汁は出にくいですね。
高:そうですね。半分だと汚れにくいです。乾燥後のドライフルーツは、無添加で仕上げています。
大:味付けなどはされていないんですよね?
高:無添加です。
大:常温保存でも大丈夫なんですか?
高:常温で、1年以上は持つと思います。
保存については、脱酸素剤(エージレス)を使用しています。
高:これを入れると酸化しないので、色が変わらないんですよ。
大:そうなんですね。
第4章|大紀産業の食品乾燥機について
大:もし、同じように果物を乾燥させて加工品を作りたい方がいたら、大紀産業の食品乾燥機を紹介したいと思われますか?
また、そのとき、どんなふうに紹介されますか。
高:もちろん紹介しますよ。自分が実際に使って、ちゃんとした品質のものが作れているので。他の機械で一からテストするよりも、実績のある機械を使った方が、農家さんにとっては使いやすいと思います。
大:家庭用の乾燥機とは、やはり違いますか?
高:家庭用は、あくまで家庭用ですね。条件出しには使えますし、少量ロットのときには役に立ちます。最後に「まだ乾ききっていないな」というものを並べて仕上げる、そういう使い方です。でも、メインで加工をしていくなら、業務用は別物です。
今回ARATO535様が導入されたのは、小型電気乾燥機「プチミニⅡ plus」と「E-3H plus」です。
いずれも家庭用電源(AC100V)で使用できるモデルです。
乾燥できる量は、乾燥させる素材や切り方によって異なりますが、目安としては以下の通りです。
電気乾燥機 プチミニⅡ plus
トレイ4枚使用で、最大 約2kgの乾燥が可能

電気乾燥機 E-3H plus
ハーフトレイ3枚使用で、最大 約6kgの乾燥に対応

加工量や作業の流れに応じて、まずは小型機から導入し、必要に応じて台数を増やす。あるいは、用途に応じて機種を使い分ける。そうした運用もしやすい構成です。
ほかにも、大紀産業では本格的かつ小型の食品乾燥機を多数ご用意しています。
製品の詳細は、下記の公式オンラインショップよりご覧ください。↓

ご不明点やご相談があれば、経験豊富な「乾燥のプロ」が、製品選びから活用方法まで丁寧にサポートいたします。
インタビューにご協力いただいた企業様のご紹介
ARATO535株式会社
住所:〒718-0311 岡山県新見市哲多町蚊家1618-5
お問い合わせ先:info@arato535.jp
ホームページ:https://www.arato535.jp/
食べチョク:https://www.tabechoku.com/producers/3077347
ARATO535様の畑は、岡山県新見市哲多町西部にある荒戸山の中腹にあります。鍋を伏せたような円錐形が特徴の荒戸山は、「鍋山」「阿哲富士」とも呼ばれ、地元で親しまれてきた山です。
火山活動によって生まれた玄武岩の山、その標高約535mという環境のもとで、安心・安全を大切にした農法で、ぶどう栽培に取り組んでいます。
栽培だけでなく、加工や流通までを見据えた取り組みを行い、地域の自然と農業の可能性を、次の世代へつなげる挑戦を続けています。